非正規労働者にボーナスや退職金を支払わないことが、「不合理な格差」に当たるか否かが争われた2件の訴訟の最高裁判決が13日に出ました。
働き方改革の中核とも言える「同一労働同一賃金」が今年4月に始まって以降、初めて示された最高裁判決。いずれも「不合理とまでは言えない」と判断し、請求が棄却されました。
旧労働契約法20条(パートタイム法8条へ)は、非正規労働者と正社員の職務内容や企業ごとの事情を考慮したとき、「不合理」と認められる格差を禁じています。
最高裁では、2018年6月の同種訴訟の判決で、「賃金総額だけを比べるのではなく、手当など賃金項目ごとに趣旨を考慮した上で、職務内容の差や企業ごとの事情を考慮し、「不合理な格差」と言えるか判断すべきだ」との枠組みを示していました。
●判決の概要は以下の通りです。
(1)契約社員に退職金を支払わなかったケース(東京メトロ子会社メトロコマース)
・職務内容は「おおむね共通する」が、正社員への登用制度を設けていた。
・正社員は、売店以外の以下の業務をすることもあった。
@売店で休暇や欠勤で不在の販売員に代わって早番や遅番を担っていた。
A複数の店を統括し、トラブル処理などするエリアマネージャー業務
B異動の可能性もあった
・退職金には、労務の対価の後払いや継続的な勤務に対する功労報償など複合的な性質があり、職務を遂行し得る人材の確保や定着を図る目的で支給していた。
【判決】退職金の支給で相違があるのは、不合理であるとまでは評価することはできない。
(2)アルバイトにボーナスを支払わなかったケース(大阪医科薬科大学)
・職務内容に「一定の相違」がある。
正社員は、業務内容の難易度が高い。
@学内の英文学術誌の編集事務
A病理解剖に関する遺族への対応
B毒劇薬など試薬の管理業務
C部門間の連携を要する業務
C異動もあった
・原告の業務は相当に軽易とうかがえる。
・正社員への登用制度もあった。
・賞与には、労務の対価の後払いや一律の功労報償、将来の労働意欲の向上などの趣旨がある。「大学側は正社員の職務職務を遂行できる人材確保の目的で支給していた。」
【判決】賞与に係る労働条件の相違は不合理であるとまでは評価できない。
【対 応】
●企業としては、通常の労働者と短時間・有期雇用労働者との間の不合理な待遇の相違の解消を目指し、以下の手順に沿って点検・検討することが望まれます。
1.社員タイプ等の現状・「均等待遇」、「均衡待遇」の対象となる労働者を確認する。
※1 均等待遇(通常の労働者と同じ方法で待遇が決定されること)
※2 均衡待遇(職務の内容(業務の内容、責任の程度)、職務の内容・配置の変更の範囲、その他の事情、の違いに応じた待遇の決定)
2.社員タイプごとに待遇の現状を整理し、待遇の違いを確認する。
3.待遇の「違い」が不合理か否かを点検・検討する。
4.是正策を検討する。
○基本給のほか、通勤、住宅、家族手当や、賞与、退職金、福利厚生などすべての待遇の趣旨・性質、支給目的を明確にすることが重要です。
@差がないなら同等に(均等待遇)
A差があれば、差に見合った待遇を(均衡待遇)
待遇差の内容やその理由について説明することも義務化されます。(中小企業2021.4)
労使間のトラブルを未然に防ぐためにも、客観的かつ具体的に説明できるよう、一日も早い段階で取り組むことが求められます。